歯科領域の変化について訪問歯科の視点から
高齢者の増加は訪問医療マーケットを拡大し、医療の領域や枠組みまでも変えようとしています。大きな地殻変動の中で歯科領域に求められるもの、歯科領域の変化について訪問歯科の視点から述べたいと思います。
2013(平成25年)からわずか5年で、日本の総人口は1憶2741万人から1憶2671万人へと約0.5%減少した一方、65歳以上の高齢者人口は3190万人から3514万人へ、324万人も増加しています。
その結果、人口に占める高齢者比率は25%から27.7%と着実に増え、しかも急速に増加を続けています。健康で自立した高齢者ももちろん増えていますが、一方では、何らかのケアを必要とする患者の絶対数も急激に増加しています。高齢者人口の急激な膨張と、在宅や施設における要介護者の増加は、今までの近代日本の医療が経験をしたことのない、全く新しいフェーズに突入していると考えます。
まず、医科においては、長い年月の「かかりつけ医」としての関係が基盤となり、患者様が来院できない状況になれば必然的に「往診=訪問診療」を行ってきた歴史があります。自転車で、往診カバン一つでも行える訪問診療です。
現在、第一線で活躍している医科の先生方が医学を学んでいた頃、現在のような超高齢者社会は想定されておらず、在宅医療という診療科目は存在すらしていなかった時代があります。
大学時代の専門領域から、開業医として必要なスキルの習得を行い、さらに在宅医療に必要なスキルの習得に取り組む。これが在宅医療に取り組んでいる医科の先生方の平均像です。
歯科の場合は口腔内清掃などを除けば、虫歯や歯周病の治療、義歯の修復など、ある程度の準備が必要になります。そのため。歯科の訪問診療をより普及させるためには、機器や器材、人員などをいかに確保するか、現状もう一工夫が必要であると感じてなりません。
地域包括ケアシステムにおける歯科の役割
厚生労働省は、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい人生を全うできる社会を目指す「地域包括ケアシステム」の構築を2025年を目標に推進しています。一般医療機関、歯科医療機関、介護施設などの多職種連携のための情報共有システムを構築、新たに「介護予防」「生活支援」の視点を加え、地域包括ケアシステムを具現化・構築する取り組みを行っています。
歯科医療の現場では、このシステムにどのように関わりどのような役割を担っていけばいいのでしょうか。
高齢化が進むなかで、市民の健康を支えるためには、医療職、介護職のご理解と協力が不可欠です。行政は多職種連携の事務局として機能し、研修会などを通じて在宅医療の推進・多職種連携の促進を後押ししながら、地域医療の接着材的な役割を担って頂ければ幸いと思っています。
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