非経口摂食となった場合
脳血管障害等で入院した高齢者の方が、病院に入院し栄養チューブによる非経口摂食となった場合に「口は使わないから」と上下の総義歯をはずしたまま一カ月ほど経過したとします。
その後状況が回復して「経口摂食に切り替えましょう」と云う段階で歯科医が登場して義歯を装着するとどうなるかと云うと、ほぼ間違いなく「食べ物を口の中に入れたままで飲み込めない」と云う事態が発生します。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。その理由は、総義歯を撤去すると口腔容積が減少し、頬筋や咀嚼筋群が廃用化して短縮する結果として、本来は前後左右に動かなければならない舌の可動域が、前後方向のみに制限されることにあります。
そのまま一カ月も経過すれば、舌は前後にしか動かないようになります。そこに専門的立場から理想的な噛み合わせ関係を持った義歯を入れてしまうと、舌が口蓋につかなくなり、食べ物を喉に送り込むことができないため「入れ歯にしたのに食べられない」と云う状態になってしまうのです。
患者さん周囲の医療スタッフやご家族は「入れ歯にすれば食べられるはず」と思っていますから、食べられない理由を認知症のせいにしてしまったりもします。
しかし実際はそうではありません。これは明らかな機能障害と云うことになります。口蓋裂などの先天的な疾患、あるいは脳卒中や癌などの後天的な疾患によって障害を受けた「食べる・飲み込む機能」や「言葉を使って行うコミュニケーションの機能」に対する診断、治療、訓練を各専門分野から、脳外科や神経内科あるいはリハビリ部門などの連携の必要が欠かせません。
入院生活から「入院患者さんをスムーズに在宅に移行」するための口腔機能プログラム充実させることを目的に、地域の歯科医師会と病院との緊密な連絡体系も必要とされているのではないでしょうか。
▶ 当院の義歯・入れ歯治療
▶ 歯科ダイアリー目次 一覧
▶ HOME