大人になってもウ蝕は増え続ける
今まで「大人になるとウ蝕増加は減る」と言われてきましたが、実は「ウ蝕の数え方のマジック」だったようです。近年の調査で年齢に関わらずウ蝕増加は一定であることが分かってきました。一方で、歯磨剤へのフッ素配合上限は1000ppmFでしたが、1500ppmFを上限として許可された朗報もあり、全世代のウ蝕予防に対してリスクに合わせたフッ化物配合歯磨剤の適応はますます重要になってきました。
年齢とともにエナメル質は成熟し、従来は歯が成熟しウ蝕になりにくくなると考えられていました。しかし、米国での調査で、1年間のウ蝕の発症数に関して大人と子供で大差がないこと、またニュージーランドの調査でも、大人になってもウ蝕は増え続けることが分かりました。なぜ「加齢にともない増え方が減る」と認識されてきたのでしょうか。それは、ウ蝕の数え方に問題があったようです。
ウ蝕の罹患状態を示す指標の一つにDMFTと云う指数があり通常、歯科疾患実態調査に使用されます。この指数を見ると、年齢とともにDMFT値のカーブがやや緩やかになり、一見すると加齢とともにウ蝕に罹患しにくくなったように見えます。
このDMFTとはD=ウ蝕のある歯の数、M=喪失歯数、F=ウ蝕で修復した歯の数、T=永久歯を意味します。肝心なのはこの指数は1本の歯に1ヶ所であろうと2ヶ所であろうと、そのカウント数値は「1」だと云うことです。これに対してDMFSと云う値があります。
DMFは前記と同じですが、TがSに変っています。このSは1本の歯を「歯面ごと」に見ています。前歯は4面、奥歯は5面を観察し、1本の歯に対して2面ウ蝕がある場合、これを「2」とカントします。DMFTでは、この場合でもカウントは「1」でした。この違いが、高齢になってもウ蝕は着実に増加すると云う実態を明らかにしました。
このことから、全ての年齢でウ蝕予防にフッ化物配合歯磨剤を使用することが必要であることが分かります。特に高齢者においては、歯肉の退縮などによる根面ウ蝕が加わり、ウ蝕は増加する傾向にあり、全年齢でフッ化物配合歯磨剤は必須アイテムと言えると思います。
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