歯根部象牙質はエナメル質より物理的・化学的に脆弱
歯冠表面のエナメル質は96%が無機質で有機質はわずかであるのに対し、歯根部象牙質は無機質が66%で有機質(そのほとんどがコラーゲン)が18%を占めており、12%は水分です。さらに硬さ(ヌープ指数で表現)エナメル質431に対し象牙質は68と低くエナメル質より物理的、化学的に脆弱です。
この象牙質のミネラルが、プラーク中の細菌が作り出す酸によって溶解し、次いでコラーゲンが分解されてう窩が形成されることで、根面う蝕が発症します。
根面う蝕が発見しにくく、発見しても処置が難しい理由は次のようなことによります。
1.健康な象牙質との境界の鑑別が困難
2.歯根の全周にわたって罹患し、かつ多数歯に及ぶことがある
3.歯肉縁下に進行していると、切削、防湿、充填が困難
4.歯髄(神経)に接近していることがある
5.Tooth Wear(歯の損耗:酸蝕、摩耗、咬耗)が進行を促進する⑥修復物による更なる不潔域の提供。
などが挙げれます。
主に中高年の方で見られる特徴の一つとして、歯ブラシを手の平でがっちり握って、左右にゴシゴシと歯磨き剤をいっぱい付けて磨く習慣をお持ちの傾向があるように感じることがあります。
この「左右にゴシゴシ磨く」ことによって、歯と歯ぐきの境目あたりの歯そのものが歯ブラシによって削れてしまい、完全に象牙質が露出した状態になってしまうことがあります。加えて、歯磨き剤をいっぱい付けて磨けば、歯磨き剤に含まれている研磨剤によって、さらに摩耗が進んでいくことも考えられます。
先に述べましたように、硬さも軟らかく成分的にも弱い象牙質が口腔内に露出すれば、根面う蝕に罹患してしまうのは、もはや時間の問題とも言えるのではないでしょうか。また、根面う蝕に罹患しなくても今度は「知覚過敏症」を発症する可能性が出てきます。
このような状況になった場合、鏡で見てみると外観的に「歯が長くなった」ように感じることもあり、顔貌が以前と違ったようににみえることもあります。心当たりのある方は、近隣の歯科医院で一度チェックを受けれらるとよろしいと思います。
歯科医院で教えてもらう磨き方でやってみると当初は「磨いた気がしない」かも知れませんが、清掃性や清掃効果には全く問題はありません。まずは、現在ご自身で行っている磨き方に、何処か一ヶ所にプラスαの磨き方として加えてみることから始めるといいかも知れません。
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