根面う蝕(根面虫歯)は加齢と共に増加
日本とアメリカで実施された根面う蝕(根面虫歯)の有病状況の調査では「根面う蝕は加齢と共に増加する」と云う共通の結果が得られました。これは、その後の根面う蝕に関する調査結果においても同様です。これを受け、現在のWHO(世界保健機関)による口腔診査法では、歯冠部う蝕と根面う蝕を分けて診査することになっています。
日本では健康志向の高まりや予防歯科に対する意識の高まりから、今後も歯冠部う蝕の減少が予測される一方、成人の残存歯の増加、高齢化の進展で、歯周疾患は増加されると予測され、結果として根面う蝕が増加し、QOLの低下が懸念されています。
根面う蝕は、歯肉や歯槽骨に隠れている歯根部が露出し、菌が産生する酸の攻撃を受けて発生します。歯根が露出する主な原因は、歯周治療による歯肉の炎症の沈静化と歯槽骨の吸収によって歯肉が退縮するためです。
歯肉の退縮を含め、根面う蝕発症の要因を整理すると次のようになります。
年齢
根面う蝕は歯肉退縮の起こる高齢者に多い疾患です。
プラークコントロール
根面う蝕は、プラーク中の細菌が作る酸で脱灰が起こります。歯冠部の表面は酸に強いエナメル質に覆われ、脱灰が始まる臨界phも5.5程度ですが、歯根部は酸に弱い象牙質で覆われ、臨界phが6.2~6.7と中性に近いため、プラークコントロールが根面う蝕予防の大きな要因であり、身体機能が低下し、プラークコントロールが困難な高齢者はリスクが高まります。
唾液分泌量
唾液分泌量が減少すると、食物残渣や細菌などを洗い流す自浄作用や酸性の口腔内を中和する緩衝作用も低下し、根面う蝕発生の危険性が高まります。唾液量は高齢になると夜間などの安静時に減少するとともに、薬の常用で減少し、う蝕が増加することもあります。
細菌叢
う蝕および歯周病へ移行する際には最近叢の変化が起こります。
これらの事が複雑に関係し、根面う蝕発生という現象を起こしていきます。