悪玉菌を除去し善玉菌を多く残す
全身へ散らばったP・ジンジバリス菌が血管内皮細胞に付着し侵入することにより、炎症が誘発され、最終的にはアテローム性プラークを形成し、動脈硬化や虚血性心疾患を引き起こすといわれています。
そのほか、膵臓がん、糖尿病、脳血管障害、認知症、高血圧症、肺炎、早産などの発症要因になることも指摘されており、P・ジンジバリス菌の毒性の強さが明らかになってきています。
このP・ジンジバリス菌をはじめ、口腔細菌による疾病リスクが解明されるとともに、疾病予防の観点から口腔細菌叢の健全化を図ることが重要だと考えられるようになりました。悪玉菌を除去し、ヒトに有用な菌(善玉菌)をできるだけ多く残すということです。そして、
①機械的な清掃による物理的除去
②ケミカルコントロールによる科学的除去
③プロバイティクスによる生物学的除去
④細菌検査を活用した免疫学的除去
の4つの方法を組み合わせた除菌治療に取り組む歯科施設が増えています。
重要なのは、歯の表面にバイオフォルムを形成しやすいミュータンス菌や歯周病菌などの悪玉菌を除去することです。そこで、歯の表面に限定して除菌治療を行う方法である「3DS(デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム)」と名付けられた除菌法が、2013年から鶴見大学歯学部附属病院に開設された「3DS除菌外来」で治療が開始されました。
除菌希望者には口腔細菌を調べる唾液検査を行うとともに、機械的処置(簡単な歯石除去など)により歯垢や歯石をまず除去します。その上でコロルヘキシジンや次亜塩素酸電解水などの殺菌成分を含んだ薬剤を使って除菌します。
唾液中や口腔粘膜上で増加するヒトに有用と推測される菌は生かしておきたいので、その人の歯型に合わせて作製した専用のマウスピースのトレーに薬剤を注入し、1日1回、5~10分間装着することによって歯の表面に常在するP・ジンジバリス菌やミュータンス菌などの悪玉菌だけを集中的に除菌します。
この除菌法が広く街中の歯科医院に普及して、重篤な脳血管障害や動脈硬化などが、予防できるようになるといいのではないでしょうか。
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