睡眠時無呼吸症候群

3. OSAに対する治療法には、経鼻的持続陽圧呼吸療法・口腔内装置治療・外科療法があります。

    閉鎖型睡眠時無呼吸症の治療方法
    閉鎖型睡眠時無呼吸症の治療(OSA)に対する治療法としては、医科歯科連携による治療が必要であり、減量や側臥位睡眠などの生活習慣の改善と共に保存療法や外科的療法などが行われています。主な連携主体は、呼吸器内科や耳鼻咽喉科との連携となります。特に扁桃肥台大や強い鼻閉を認める患者様ならびに小児は、耳鼻咽喉科に精査・治療を依頼します。

    経鼻的持続陽圧呼吸(CPAP)療法
    CPAP療法は、睡眠時の無呼吸を防ぐために気道に空気を送り続けて気道を開存させ、睡眠中の無呼吸を防止する治療法であす。PGS検査でAHIが20回/hを示し、日中の傾眠や起床時の頭痛などの自覚症状が強く、日常的に支障を来しており、睡眠ポリオグラフィー上で睡眠の分断化や深睡眠が著しく減少または欠如している症例を指します。

    口腔内装置(OA)治療
    OA治療は、その作用原理から下顎前方位型装置、舌維持型装置、軟口蓋挙上型装置の3種類に分類されるが、下顎骨自体を前方位に維持させる下顎前方位型装置が最も一般的に用いられています。

    さらに、下顎前方位型装置も一体型と上下分離型に分類することができ、それぞれに特徴があります。一体型は上下顎部が一体となった構造で、シンプルではあるが顎位を動かすことはできません。一方、上下分離型は上下顎の装置が分離しており、Herbst装置や顎間ゴムなどを応用して連結され、下顎後退運動は制限するものの開口や前方ならびに側方運動がある程度可能です。

    顎前方位型OAは、下顎を前方位に固定することで機械的に舌根部の気道を拡大する効果とオトガイ舌筋の呼吸性筋活動を増大させ、気道内院圧による舌の引き込みを防止するという機能的効果が考えられています。舌根部が狭窄しやすい顔面の前後径が短い症例や小下顎症、舌の大きい症例、舌の緊張度が低下した症例ならびに軟口蓋長が長い症例が適応とされています。

    また、OAの固定源である歯が多数欠損した症例や重度の歯周炎に罹患した症例、顎関節に障害がある症例は適応外となります。これらの装置装着後は、PSG検査を実施して治療効果の判定も必要と思います。OAの長期使用に伴い、患者様から臼歯で噛みづらくなったという訴えや、診察時に咬合関係の明らかな変化を認める症例を経験することがあります。

    OA治療患者様にたいしては、原則として3カ月~6カ月に1度の経過観察と1年に1度パルスオキシメーターを用いた在宅簡易検査のよる評価が必要と考えます。

    外科療法
    OSAに対する外科療法としては、扁桃摘出術、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術、レーザーを用いた口蓋垂軟口蓋形成術、舌縮小、舌骨挙上術、上下顎骨前方移動術などの種々の手術法が用いられてきましたが、その適応や効果については様々な報告があります。

    扁桃肥大を認めるOSA患者では、アデノイド切除術ならびに口蓋扁桃摘出術が第一選択であり、手術により症状は著明に改善する。桃摘出術により改善しない場合は、肥満や顔面形態、アレルギー性鼻炎などの関与を検討すべきと考えます。

    口蓋垂軟口蓋咽頭形成術やレーザーを用いた口蓋垂軟口蓋形成術については、有効率が必ずしも高くないとの報告や有効であったものの長期的に舌根部における気道狭窄によりOSAが重症化した症例などの報告もあり、適応となる症例の選択が重要と考えます。

    近年、OSA患者に対する上下顎骨前方移動術が欧米では広く行われるようになり、その有用性が報告されています。本法は、上顎骨の切り取り術と下顎枝矢状分割法ならびにオトガイ形成術などの顎矯正手術によって上下顎骨を前方に移動させて気道の拡大を図る治療法であるが、国内では適応基準が明確でない点と日本人は短頭型であることから術後に上下顎前突用の顔貌になりやすい点などから、あまり積極的に行われていません。

    日本人OSA患者に対する上下顎骨前方移動術の適応基準や顎骨移動に伴う症状改善の予測などの検討は、未だ途上ではありますが、顎骨が頭蓋に対して後方位にあるOSA患者では、顎顔面歯列形態の外科的矯正治療として上下顎骨前方移動術が根治的な治療法に成り得ると考えます。

    武内 光晴

    武内 光晴

    武内デンタルクリニック 院長 歯科医師

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