口腔内細菌と全身疾患
「人生100年時代」の今、予防医学の重要性が高まってきています。こうしたなか、歯科医療の分野においては、口腔内の悪玉菌を除去し、口腔内細菌叢を健全化することで全身疾患の発症を予防する取り組みが始まっています。
口腔内には700種類以上の細菌が存在しますが、この20年ほどの研究で「悪さ」をするのは歯の表面でバイオフィルムを形成しやすい菌で、そうした菌の種類は限られていることが分かってきました。
その代表的なものが、ウ蝕の原因となるミュータンス菌、歯周病の発症に最も関係が深いとされるレッドコンプレックス(ポルフィロモナス・ジンジバリス菌、トレポネーマ・デンティコーラ菌、タンネレラ・フォーサイシア菌)などです。
これらの菌のやっかいなのは、歯肉の傷から血液中に侵入して菌血症を生じ、体内のさまざまな部位や臓器に異所性感染を引き起こすことです。エリザベス異1世がウ蝕から敗血症に至り絶命したことは有名で、かなり以前から口腔内細菌が全身疾患と関連していることは知られていました。
ちなみに、同じ常在菌の腸内細菌も門脈系経路で菌血症を起こしますが、肝臓で分解されるため、口腔内細菌のように異所性感染を起こし全身に悪影響を及ぼすことはありません。
さらに近年は、疫学研究によって個々の菌における全身疾患との関係も具体的に判明しています。なかでも、要注意なのがポルフィロモナス・ジンジバリス菌(P・ジンジバリス菌)です。
この菌は、タンパク質に含まれるアルギニンをシトルリンに変える酵素を持っている為、その作用によって変異したたんぱく質を体が異物とみなし、関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患を発症すると考えられています。
このようなことから見ても、歯科が全身の疾患を担う時代になってきており、口腔内の悪玉菌を除去する専門外来での取り組みが重要視されてきています。
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